大学病院から家庭医実習を当院では行っています
2020年秋、
実習を終え提出されたレポートをご紹介いたします。
今回、わたクリニックで実習をさせていただいて一番印象に残ったことは、わたクリニック全体で一月に60~70人のガン末期の患者様が看取られ、亡くなっているというその事実である。
まずは初めにその数に驚いた。全国で悪性新生物が死因のトップであることは知っていた。しかし実際に在宅医療の現場に出てみて、これだけ多くの患者様やそのご家族がガンに苦しめられ、ガンと闘い、毎月数多く亡くなってしまうという事実は衝撃的であり、正直胸が苦しくなるような現場であった。しかし、その中でも明るく前向きに、1日1日を大切に生きる患者様やその家族を目のあたりにして自分が医師としてすべきことは何か、患者のためにしてあげられることはないのか、常に考え続けるという、医師として一番基本的で忘れてはならない姿勢を思い出させるものだった。そういう意味で、自分が何科の医師になったとしても必ず向き合うことになるであろう「ガンによる死」を今実感出来たことはとても大きな経験であった。
さらには、ガン末期で亡くなられる多くの患者様の病気への理解度や、死に際への満足度にも驚いた。医師や訪問看護師をはじめとするチームは、患者様自身やそのご家族と信頼関係を構築し、その病気や「最後」の瞬間の迎え方について何度も論議を重ねている。その中で出来る限り納得して、痛みや苦しみの少ない死を迎えられるように丁寧に話し合われているが一週間という短い実習期間でも感じることができた。一週間の中で4人の医師と行動を共にさせていただいたのだが4人ともそれぞれ患者様とのコミュニケーションの取り方は異なる。しかしその中でも、コミュニケーションに患者様へのやさしさや配慮がそれぞれ含まれているのを肌身で感じて、そういう雰囲気作りから信頼関係は築かれていくものだと感じた。どれだけオープンに腹を割って患者と医師が話し合えるか、それだけで患者の死への向き合い方は異なると感じた。
最期に、一週間という短い期間ではありましたが大変お世話になりました。今回の実習で学ばせていただいたことを活かせるように、頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。
投稿日:2021年1月14日